素人童貞のHIVライフ

素人童貞のままHIVに感染してしまったおっさんのHIV関連ログ

(5)検査結果で初めて病状のことを知る

いまの自分の感染状況を初めて知る

前回の検査(↓)から数日後、検査結果の確認のため、拠点病院を訪れました。

担当医に、検査結果を手渡されます。

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即日検査、確認検査では「感染しているかどうか(陽性/陰性)」しかわかりません。

この血液検査によって、初めて「いま自分のHIV感染の状態とその影響がどうなっているのか」がわかるわけです。

HIV感染者の健康状態を判断するバロメーターとしては、「CD4(CD4T細胞数)」の値がよく用いられます。

CD4については、こちらの解説がわかりやすいかなと思います。

上記ページにも記載されていますが、
CD4T細胞数=白血球数×リンパ球陽性率×CD4T細胞率で求められます。
今回の場合、
白血球数8300(/μl)×リンパ球陽性率25.8%×CD4T細胞率41.1%880(/μl)
となります。写真に赤字で書かれた「880」の数字は、担当医さんがその場で計算して書いてくれました。

率直に言うと、この時点では「至って健康」です。(※HIVウイルスの影響という観点で)
感染した(と自分が推測している)時期からまだ半年程度、HIV感染からエイズ発症まで、無症期間は数年あると言われていて、私の場合はまだまだ進行していない、ということになります。

一方で、ウイルス量については
3.2X10*4
と書かれており、これは「3.2×10の4乗」、すなわち32000となります。単位「log copies/ml」で、logっていうのは対数なんですね。なので、文系の私には正直よくわかりません。調べてわかったら追記します。とりあえず当時も今も「なんかすげー多そう」ぐらいに思っています。

自分の状態を知った上でこれからどうするか

で、担当医からは以下のことを伝えられました。

  1. 現状ではすぐに健康に影響が出るような免疫状態ではない(健康である)。
  2. なので、すぐに治療を開始しなくてもよい
  3. 治療を開始するには、経済的な観点から障害者手帳が必要である。
  4. 障害者手帳の取得には、最低4週間ほど空けて2度の血液検査が必要である。
  5. 現状の数値だと障害認定が難しい可能性がある。
  6. HIVの治療は、一度開始すると一生毎日服薬を続ける必要があり、生活への影響が大きい。また、経済的な負担も当然増える。

1については前述のとおり、検査時点でCD4の値が880あり、これは正常値(700~1500)の範囲内。
2についてもそのまんまで、とりあえず(HIVに感染している、という事実以外は)健康上の問題はないので、すぐに治療を開始する必要はない。
3~5は、治療を開始するにあたって、事実上の前提条件になる、障害者手帳の取得についてです。国内では抗HIVウイルス薬は非常に高価(だいたい1ヶ月ぶんで20万円、保険適用で3割になっても6万円以上)ですが、更生医療の補助制度を受けることができ、大幅に負担を軽減できます。その更生医療補助の条件が障害者認定であり、その取得が(今の健康状態では)難しい可能性がある、ということです。
平たく言うと、「障害者として認定されるにはまだ元気すぎる」ということ。
6は文字通り、生活へ大きな変化が出るよ、ということです。……ですが、私の場合はすでに別の持病で毎日服薬しているので、あまり気にならない部分でした(薬を飲むのも苦手ではない)。

私は、ただちに治療を開始する必要がなくとも、体内でウイルスが増殖していくのを放置することが非常に不安で、なるべく早く治療を開始したい旨を伝えました。転職をどうするかをまだ決断できていなかったこともあり、とにかく先の見通しが欲しかったのです。でも、現実的には障害者手帳を取得できないことには治療はスタートできません。

いずれにせよ、最低2回の血液検査が必須なので、それを見てから決めましょう、ということで、1か月後の検査予約をして終わり、ということになりました。

 

補記:CD4の値と身体障害認定について

これは手帳を取得して、他の陽性者の方の話を聞いて知ったのですが、ほとんどの自治体で「CD4が500切らないと手帳の認定が下りない」と医師に言われるようです。

HIV感染での身体障害認定基準によると、HIVでの障害等級が一番低い4級の条件は

(9)ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(PDF:741KB)

(4)等級表4級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。
ア CD4陽性Tリンパ球数が 500/㎕以下で、(1)のアの項目(a~l)のうち1項目以上が認められるもの
イ CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、(1)のアの項目(a~l)のうちaからdまでの1つを含む2項目以上が認められるもの

とあります。「(1)のアの項目」というのは

a 白血球数について 3,000/㎕未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く。
b Hb量について男性 12g/㎗未満、女性 11g/㎗未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く。
c 血小板数について 10 万 /㎕未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く。
d ヒト免疫不全ウイルス-RNA量について 5,000 コピー/㎖以上の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く。

e 一日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労が月に7日以上ある。
f 健常時に比し 10%以上の体重減少がある。
g 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く。
h 一日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある。
i 一日に2回以上の嘔吐あるいは 30 分以上の嘔気が月に7日以上ある。
j 口腔内カンジダ症(頻回に繰り返すもの)、赤痢アメーバ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症(頻回に繰り返すもの)、糞線虫症及び伝染性軟属腫等の日和見感染症の既往がある。
k 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である。
l 軽作業を越える作業の回避が必要である。

 となっていて、マーカーで強調したdの項目(ウイルスRNA量が5000コピー以上)というのが感染者の場合まず確実に成立している(感染初期の私でも32000コピーあったわけで)ので、CD4が500以下であれば、ほぼ自動的に4級のアのパターンを満たすわけです。

これがCD4が500以上の場合だと、さらにe~lからもう1つ条件を満たさないといけないわけですが、まあぶっちゃけ「HIVが原因で発症してるかどうか」がわからんわけですね。CD4が500以上だと、まだ健康にあまり影響が出ないので、なかなか追加の条件が満たされなかったりします。

HIVの、特に軽度の障害認定はこの辺が難しいのでしょう。HIVは「不治の伝染病」ですが、病気にはなっていても「生活に支障が出る=障害がある」状態になるまでは「障害者」として認定をすべきでない、ということなのでしょう。

実際、福祉にかかるお金(我々HIV患者の場合はもっぱら医療費)のことを考えれば、あまり気軽に発行したくないというのも理解はできます。

一方で、現在HIVは「完治はしないけど、相手に感染させることもなくなる」ところまで薬で抑え込むことができるようになりました。感染拡大を防ぐためにも、早期の治療開始が望ましいと思うのですが……。(いま障害者認定を増やすことと、感染が拡大して将来の障害者が増えること、どちらがコストとして高くつくのか……)